仕事やこれまでコツコツと積み上げてきもの一気に崩れていくような気がするのが、転勤族・妻じゃないかと思っています。
納得していてもやっぱり辛い。
そんな時に、湧いて出てくる「あの人はいいな…」っていう気持ち。
でも、何の生産性もないのに自分が落ち込むだけですよね。
なんとか消せたらいいな・・そう思っているあなたに読んでほしいのが、青山美智子さんの小説「お探し物は図書室まで」。
ごくごく普通の人が主人公のお話だからこそ、共感できる部分がたくさん。
あの人はいいな・・と思っていた「あの人」にも、実は悩みやモヤモヤした気持ちがあるのかも。
そんなことに気付かされて、心がふっと軽くなります。
地元の友達が仲良さそうにしてても、「よかったね」と心から言えるようになります。笑
特に転勤族主婦になって、もやもやしているあなたに読んでほしい一冊です。
転勤族・妻のどこにもぶつけられない辛い思い
突然やってくる辞令。
夫の転勤・お引っ越し。
別にそれは妻でなくてもいいけれど、住む場所が変われば、どちらかがそれまでの仕事のやり方を変えなくてはいけません。
東急住宅リースの「ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査2019」。
夫の転勤前に仕事をしていたことがある転妻に、夫の転勤によって感じたことを聞いています。
4割弱が
せっかく築いたキャリアを継続できずにくやしい
2割が
夫ばかりキャリアを継続しズルいと思う
と回答したそうです。
仕事を始めた時や、入社した時、もっと遡って学生の頃や小さな頃の夢とは、生きていくうちに変わっていくのは仕方ない。
結婚した時に受け入れた運命。
そう思いつつも時々考えてしまう、これで良かったの?ってこと。
何も転勤だけじゃないです。
独身の時は結婚のこと、結婚してからは子供のこと、転勤したら仕事のこと。
この先ずっとこんなどうにもならない気持ちを抱えながら生きていかんといけんのか?
とちょっとやさぐれておりました。
そんなエンドレスに見えた嫉妬とかドロドロした汚い気持ちに、あっさり終わりをくれたのが「お探し物は図書室まで」でした。
「お探し物は図書室まで」が教えてくれたこと
「お探し物は図書室まで」は2020年に発売された青山美智子さんの小説です。
あらすじ
小さな図書室を舞台に、主人公が異なる5つのお話が展開します。
主人公は違いますが、それぞれのストーリーが少しずつ重なって繋がって1つのストーリーになっています。
今回紹介したいお話の主人公は・・ファッション誌で編集者をしてきた女性。
転妻・主婦の心に響いた話
物語は、彼女が子供を産んで、いざ職場復帰!というところから始まります。
ファッション誌の仕事が大好きで、実際産休前は成果も上げていて。
だから産休中も、戻ったらすぐに仕事ができるようにと一生懸命準備していた。
でも。
戻ったらそこに自分の居場所はなく。
代わりに、以前の自分のようにバリバリと仕事をしている後輩のキラキラ輝く姿があって。
もう、比べちゃいますよね。
なんで自分は・・・
なんで彼女は・・・
そんな時に、産休前・一緒に仕事をしていた年上の作家さんからこんな言葉をかけられます。
「メリーゴーランドに乗ってるとこか」と。
さらに・・
「独身の人が結婚してる人をいいなあって思って、結婚してる人が子どものいる人をいいなあって思って。そして子どものいる人が、独身の人をいいなあって思うの。ぐるぐる回るメリーゴーランド。おもしろいわよね、それぞれが目の前にいる人のおしりだけ追いかけて、先頭もビリもないの。つまり、幸せに優劣も完成形もないってことよ。」
「お探し物は図書室まで」/青山美智子
そしてこんな言葉が続きます。
「楽しみなさい、遊園地は広いのよ」
「お探し物は図書室まで」/青山美智子
みんな同じような気持ちを抱いている
女性っていろんな生き方があって、いろんな生き方がある分、選べる分、今は正解なのか、あっちの方が良かったんじゃないか、あっちの人はあんなに楽しそうなのに、やっぱり間違えたんじゃないか。
って思うことも多くなる気がします。
でも自分が羨んでいる人も、別の誰かのおしりを追いかけてうらやましいと思ってる。
ただしそれは、メリーゴーランドに乗っている人だけなのです。
きっと何か言ってきたりする人は、メリーゴーランドに乗っていて、前の人の背中をずぅっと追いかけている人で。
反対に、自分の生き方に自信を持ってスッと立っている人って、遊園地の他の乗り物やアトラクションを見つけているのかもしれません。
もしかしたら遊園地にすらいないのかも。
学生の頃の私は、今のほぼ専業主婦みたいな生活、想像すらしていませんでした。
バリバリ働くの、死ぬまで!と本気で思っていたし、終電を逃してタクシーで帰ったり、休日も会社にいる・・なんてこともしてました。
それが楽しかったこともあったけれど、そのせいで病んだこともありました。
ただそれが幸せだったかどうかは別にして、走り回っていたのは間違いなくて。
空回りだとしても。
だから毎日が怠けてるような気がして、何か重たいものを持たなければ、何かやらなければと焦るばかりだった気がします。
それも前の人のおしりを追いかけて。笑
でもメリーゴーランドを降りて、自分の今の生活を見つめると、うーん今だって悪くないんじゃない?と思える自分がいます。
特売の日にスーパーに行ったり、鰹節と昆布で出汁をとってみたり、形の悪いクッキーを焼いてみたり。
ちょっと複雑な料理に挑戦して大失敗して、その日のメインがなくなったり。
パンでも焼くかと思えたり。
自分に余裕があるから、夫の話が聞けるとか。
まぁいいか、と許せるとか。
次は何に挑戦しようかと考えて、その第一歩としてブログ始めてみたのも、今の生き方を選んだから。
1円稼ぐことの難しさに苦しんでますが、会社員の時には味わえない1円の嬉しさも知りました。笑
今の私に満足しても良くて、次はどこへいこう・・?と前を向いてもいいんだよ。
この本が私に教えてくれました。
「今」自分が求めていることは?
お話の主人公は、最終的にファッション誌に今は戻れないと判断して会社を辞めて、絵本の出版社へ転職します。
スケジュールがタイトでチーム作業が必要なファッション誌では、小さな子供を育てながらでは、自分にもチームにも負担がかかる。
絵本の出版社の方は、絵本のターゲットが子供ですから、自分の子供の意見を聞いてきてとお願いされたり、むしろ連れてきて、となったり。
その時自分が1番無理なくいられる場所。
それが実は楽しくて、意味を感じられて、結局1番自分が求めていることだったりするのかもしれません。
それが小さな頃や学生の頃、ほんの少し前に描いていた自分の未来の姿とは違っていても。
だからこそ面白い。
それなら自分の今を受け入れて、一歩前へ進もう!と思わせてくれる、背中をぽんっと押してくれるのが、「お探し物は図書室まで」なのです。
どれも何気ない日常を描いているのに心に響く
1冊の中にいくつか入っている短いお話の主人公は、全て違う人です。
婦人服の販売員に、経理の人、ニートに定年退職の男性。
どうでしょう、自分と立場違うからどうなの??とお思いですか?
いえいえこれが不思議と、どの主人公の中にも自分の姿が見つかってしまいます。
特に定年退職の男性のお話を転妻主婦にはぜひ読んでほしい!
短い5人のストーリー。
ごく普通の日常のテーマがこんなに胸を打つなんて。
でもこういう日常の話こそ、これでいいんだよと言ってほしいのかもしれません。
テレビや雑誌、ネットで取り上げられるのは、何か他の人と違うからで。特殊だからで。
日常の話なんて取り上げてくれないから、みんなもっとすごいことしてるんじゃないかとか思ってしまうけど。
この本を通して、ごく普通の日常をいいなと思えたことで、じゃあ自分のごく普通の日常もOKなんじゃないかと思えたのかもしれません。
こういう本ってなかなかない。
青山さんに感謝しかないです。
▽こちらの本もおすすめです。
まとめ
結婚する前は、結婚してる人いいなーーで。
結婚したら、子供が・・・で。
私は今そこでストップなのですが、まだ続きがあったのね、そしてずっとループしていくのね。と教えられたのがこの本でした。
少しずつ変わっていくことを受け入れながら、その時自分ができることをやっていこう、そんな何だか当たり前のことをめちゃくちゃ素直に思えました。
メリーゴーランドを降りると楽なんですね。
早く降りればよかった。笑
おりたいな、って方、また乗っちゃった、って方、ちょっと疲れた時・迷った時にあったかいココアのようなお話をぜひ。
▽前向きな気持ちがチャージできたら「転勤族でよかったこと」を数えてみる
▽大人におすすめハリー・ポッター読んでみませんか?